うわあ、と目をまん丸にして、直は目の前に置かれたものを見回した。 「すごいです、秋山さん」 「そんなに大したもんじゃないと思うけどね」 「そんなことないですよ! すごいです!」 直が余りにもうわーうわーと歓喜の声を上げてすごいすごいを繰り返すものだから、秋山はな んだかむず痒いというのか、居た堪れないというのか、無意識にガシガシと頭をかいてしまう。 そんな秋山の状況を分かっているのかいないのか(多分に、後者だろう)、直の目は目の前の ものにいまだに引き寄せられていた。 「吃驚です。秋山さんって本当になんでも出来ちゃうんですね」 「これくらい誰でも出来るだろ。まあ、俺も母子家庭だったから、ある程度の家事はこなさない わけにもいかない状況にあったけどね」 「それにしたって凄いですよ! 私、負けちゃいそう」 「なに言ってんの。俺には君みたいに手の込んだことは出来ないよ」 「秋山さんこそなに言ってるんですか! これだけのことが出来ちゃうのに、そんなこと言った ら、世の中の女の子に怒られちゃいますよ!」 「そんなもん?」 「そんなもんです」 「女の子って難しいもんだな」 「秋山さんにも、難しいんですか?」 「難しいよ」 特に誰かさんは。 とは、言わずにおいておいた方が、多分無難。 直との付き合いが長くなって、段々とその辺りも学習してきた秋山は要らぬ言葉を引っ込めた 代わりに、すいっと箸を直に差し出した。 「で、いつまで鑑賞会してるのかな?」 「あ、はい、食べます食べます! 戴きます!」 「慌てなくても、逃げないけど」 「うわー、美味しい〜! あ、秋山さんなにか言いました?」 「いや、別になにも」 「そうですか? あーもー! これも美味しい! 凄いなあ。これが毎日食べられたら凄い幸せ ですよ!」 「そこまで褒めなくてもいいんじゃないの?」 「いえ、本当のことですから!」 「あ、そう」 「………………秋山さん!」 「なに?」 「私、いいこと思いついちゃいました。毎日、秋山さんの御飯を食べる方法!」 「毎日って」 「結婚しませんか!?」 俺に毎日味噌汁を作ってくれ、とか、一昔前はプロポーズの定番だったなんて。 現代っ子は知るわけございません。 (俺が嫁入りするのか? いやこの場合は婿入りか? いやいや、そういうことじゃなくて) 「ナイスアイデアじゃないですか!?」 箸を片手にそれはそれは嬉しそうに、笑う彼女は無敵です。
もちろんですが、直ちゃんは自分がプロポーズしてるという意識はありません。 これは、原作イメージですね。 わりと原作だと、秋山さんに抱きついたり手を握ったり、積極的なので(笑) でも、ドラマでもありですか? どっちもでOKですかね? それで、秋山さんはなんて応えたんでしょうね。 「不束者ですが」とか、言ったらいいのに。 「不束者って、なんですか?」って直ちゃんに切り返されればなおヨロシ。