ヤンジャン34号から。
はっはっは、捏造の嵐です。
ネタばれしてます。
お気をつけて!
前提として。
北の国で起きていたことを、ディーラー二人の茶目っ気で
南の国の方にモニターを通して見せちゃった、となっています。
ドラマだとモニターありましたけど、
原作って、あくまでも空港だからそれって無理ですかね?
まあ、捏造ですから! そういうことだって思って、見てください!
「へーえ、ヨコヤってけっこうなSだわね」
ぽつりと落ちたフクナガの言葉に、直がきょとん、と目を丸くした。
「エス?」
「そうよ、どう見たって、あれはSじゃないの」
「ええと、それって、SとMの、Sですか?」
「それ以外の何があるってのよ。アキヤマも大概Sだけど、ヨコヤのは性質が悪そうねえ。
まあ、Sにそもそも性質がいい悪いがあるかどうか怪しいもんだけど」
フクナガの言葉を半分ほどしか聞いておらず、一人考え込んでいた直はちらっと画面の映
像を見てから、首をううーんと傾けてみせた。
「あのーフクナガさん。Sって、ヨコヤさんが、ですか?」
「だから、そうだって、言ってるじゃないのよ」
「ええー!? ヨコヤさんが? アキヤマさんがSだっていうのは分かりますけど、ヨコヤ
さんのどこがSなんですか?」
「あんたね、前から思ってたけど、仮にも自分の好きな相手のことをはっきりきっぱりSだ
Sだって公言するのはどうかと思うわよ。別にアキヤマが他人からどう思われようとアタシ
には関係ないけどね」
「だって、本当のことですから。それより、ヨコヤさんのどこがSなんですか?」
教えて下さい、と真剣に見上げてくる直に、フクナガは思いっきり溜息を吐く。
「見たまんまよ、見たまま! 縛って、目隠しして、しかも放置プレイ。立派にSね。あの
二人がMだとはちょっと思えないからSMって構図にはならないけど、でもまあ、見た目だ
けならちょっとSMプレイっぽいじゃない」
くくく、と笑うフクナガだったが、直は一向に納得する様子がなかった。
「あれが、S?」
などと小さく呟いてヨコヤと縛られた二人を見つめている。
「まあねえ、ヨコヤはどう見たって性格良さそうじゃないし? (ここで、それをおまえに
だけは言われなくいだろ、と四方八方から突込みがこっそり入っていた) いい感じにSっ
ぽいって言えばそうかも………って、どうしたのよ、ナオ」
「間違ってます!」
「は?」
いきなり拳を握って力強くきっぱりと言い切った直に、フクナガは面食らってしまう。
間違いって、なにがだ。
「ヨコヤさんがSだって言うのなら、間違ってます! あんなのSじゃありません!」
「はあ? ちょ、ちょっとなによそれ。てか、いきなりなに言い出すの。あれは、どこから
どう見たってSでしょうが。何が間違いなのさ」
「だって、Sは攻撃、オフェンスで、Mは守り、ディフェンスじゃないですか」
直の発言に、フクナガはぽかーんという擬音語が聞こえそうな顔で、言葉を無くす。
もちろん、直はそんなことには気づかないで自分の意見を主張するのに忙しい。
「あれじゃあ、攻撃にもなっていないし、守備もできないじゃないですか」
「………あんたの言うことは大概理解できないけど、今日は本当に駄目だわ。何よその、攻
撃だの守備だの。野球? サッカー? なんだってのよ」
「フクナガさんこそ何言ってるんですか! 私、ちゃんと秋山さんに聞いて知ってるんです
よ。Sは攻撃でMは守備ですよね。ルールを守らなくちゃゲームにならないですよ」
言い切って拳を握る直から、フクナガはギギギギ、と油の切れたブリキのおもちゃのよう
な動きで少し離れた場所に立つアキヤマを見た。
「………………アキヤマ」
おまえか? おまえだな? おまえがこの天然にアホなことを教えたな?
視線で突っ込んでも、秋山は何処吹く風だ。
「私、行ってきます!」
「行ってきます、って、行くって何処によ、って、ま、ちょ、」
慌てるフクナガを尻目に、直はくるっと踵を返すや超特急の弾丸となり南の国を飛び出し
ていった。
残されたフクナガは、空しく伸ばされたままになっていた手をだらりと下すと、改めて視
線を我関せずを貫く男へ向ける。
「アキヤマ、これはどういうことかしらね? 説明してもらえないかしら」
「説明もなにも、俺はあいつのレベルに合わせて説明したつもりだったんだが。まさかこん
な形で被害が広がるとはな」
「被害?」
確かに今の衝撃はかなりのものだったが。
「北の国にだよ。まあ、北の国、というよりは、主にヨコヤか」
言いたいことがなんとなく分かって、フクナガは思わず額を押さえてしまった。
「………気の毒な奴………」
「本当にな」
「アキヤマ」
「なんだ?」
「あんた、笑ってるんだけど」
「気のせいだろ」
それはない、と同時に傍観者たちから入った一斉の突っ込みは、それはそれは見事に足並み
を揃えたものだった。
向けられた相手は暖簾に腕押し、馬耳東風だったのは言うまでもないけれども。
「ヨコヤさん!」
「わー! 出た!!」
出たって、ヨコヤさん。
お化けじゃあるまいし。
ある意味、お化けの方が怖くないかもしれないけど。
南の国の面子がこちらも綺麗に揃ってツッコミ。
もちろん声はないが。
「ヨコヤさんは間違ってます!」
「あ、なにが、かな?」
「Sです、もちろん」
ここで即座に直の発言の意味を理解できたのなら、それは確実に宇宙との交信が素で出来ち
ゃう人だと証明するようなものだろう。
当然だがヨコヤはそんな器用な真似は出来ないので、思いっきり困惑の表情を露にして後ろ
にすでに逃げ腰だった。
「………S?」
「そうです、Sです。ヨコヤさんのSは間違ってます! Sならちゃんと攻撃しなくちゃいけ
ませんよ! オフェンスなんですから!」
秋山さんは世界一正しくて、物知りで、言っていることに間違いなんて一つもない、という
のが直の秋山観であり、デフォルトであるから、違うなんてことはけっしてありえない。
その秋山がしてくれた説明からすると、ヨコヤは絶対に間違っている、ということになるわ
けだが、ヨコヤにそれを理解しろというのはあまりにも無理難題だろう。
アリゲーターに腕立て伏せをしてごらん、と言うのと同じだ。
しかし直にはその辺りの事情や都合や現実は、問題外の論外だった。
「早くその二人の目隠しとかはずして下さい。 そうしたらきちんと攻めて、守って、正しい
SMをきちんとやってくださいね!」
正しいSMってなんだ。
攻めて守るって、なんだ。
いったいどうしろって言うんだ。
ヨコヤの心の悲鳴を、もちろん南の国の面々は綺麗にスルーした。
縛られている二人に至っては、自分たちのことは放っていてくれて全然かまいません、とい
うか寧ろこのままの状態しておいてくれると、巻き込まれなく済んでいいんじゃないのだろう
か、とまで思っていた。
多分、それは無理だろうけれども。
その頃、ちょっとした遊び心で南と北のモニターを繋いでみたりしちゃったレロニラとネア
ルコは、あともう少しで笑い死にできるような有様で、必死に堪えていたとか、いなかったと
か。
なんかもう、ヨコヤさんのなさることに、笑わずにはいられなくて。
なんだそれはー! どこまでなんだー! と。
なので、私の代わりに直ちゃんに突っ込みいれていただきました。
この先の展開は二通り考えられますが、私としては
直ちゃんに活躍の場を与えられる展開を望みますねー!
秋山さん認定で(笑)