「あ、フクナガさん、こんにちわー!」 「相変わらず無駄に元気ね、あんたは」 「フクナガさんは綺麗ですね〜。いいなあ」 「………………」 「あの、フクナガさん? 頭が痛いんですか? 薬、買ってきましょうか?」 「あんたのそういうところが、アタシは苦手なのよねえ」 「え?」 「まあいいわ、こっちの話よ」 「そうですか? あ、そうだ! この前は引っ越し祝いありがとうございました!」 「ああ、そういえばそんなこともあったわね」 「早速使ってます!」 「へえ? あれを?」 「はい! 毎晩楽しませてもらってます」 「へーえー? あれで楽しんでるですって? ふうううん?」 「フクナガさん、面白い顔になってますよ?」 「面白いことをあんたが言うからよ。で? どうやって楽しんでるわけ?」 「もちろん、YES・NOゲームですよ。秋山さん毎回出す問題が難しいから、大変です」 「………なにそれ」 「え? あれってそういう風に使うんですよね? YESかNOかで答えられる問題をお互いに 出しあいっこして、それをあのクッション使って、答えるって。それで、どっちかが不正解する まで続けて、負けた方が次の日の朝ごはんの当番なんです」 「………………………………ナオ」 「はい?」 「アキヤマに伝言して欲しいんだけど」 「いいですよ。なんですか?」 「カイショウナシ」 「はい? それだけですか? 他になにか」 「それだけで十分すぎるくらい伝わるからいいわ。ああ、そうね、思いっきり力込めて言ってく れれば尚いいわ」 「良く分からないけど、分かりました。カイショウナシ、って伝えればいいんですね?」 「そうよ」 「じゃあ、ちゃんとお伝えします」 「そうして頂戴。じゃあね」 「はい、今度、一緒にお茶しましょう、フクナガさん!」 「そうね、今の伝言伝えたらアキヤマがどんな反応したか、教えて貰うときにでもね」 「はい!」 「で、フクナガにそう言えと言われたと」 「はい」 にっこり笑って、力を込めて。 「カイショウナシ」 だそうですよ、と言われて。 心中穏やかでない彼の傍らには、問題のYES/NOクッション、あるいは枕が。 そろそろ打ち捨てられてしまいそうな予感をひしひしと感じながら、転がっていた。
「イエスノーゲーム」を捏造して説明しちゃったらしい秋山さん。 フクナガさんへの報復が一段と悪化しそうな予感。