■オフィールの苑    
  
「なんてゆーかさあ、すげえ、サツバツとしてる、って言う感じがするってばよ、こ
の町」
「そうだろうな」
 人の多い中心街の大通りを避けて、やや狭く周囲にこれと言う店もない民家ばかり
が建ち並ぶ道を、サスケとナルトは常より早い歩調で歩いていた。
 すれ違った男の、剥き出しの腕に刻まれていた無数の傷に目をぱちくりさせながら
思わず立ち止まり、振り返って見送ってしまったナルトは、そのせいでサスケとの間
に出来てしまった距離に気付くと、慌てて少し小走りにその背中を追いかける。
 そして、声を掛けた。
「だろうなって、どういう意味だってばよ」
「この国は、そういう国なんだよ」
「そういう? 殺伐としてるのが当たり前の国だってこと? つかなんでそれが当た
り前なんだってばよ」
 サスケの隣に追いつくと、ナルトは不思議と言うよりも疑念の色の強い目をしてそ
の顔を見上げた。
 人族の国をいくつも旅して来た中で、戦争の中に在る国にも滞在したことや、これ
から戦いに巻き込まれようとしている国や場所を訪れたこともあった。
 人族と呼ばれる者たちは、概ね好戦的である。
 それがナルトの、もっとも明確な認識だ。
 もちろん彼らはなにも好き好んで戦いを行うというわけではないのだろうが、良く
も悪くも他者に対して優位にあろうとする傾向が極めて強い。
 その結果として、他者との争いに勝とうとする好戦的な性質が表に出やすいのだろ
う。
 もちろん、中には戦争を嫌う穏やかな人たちも多い、と言うより、大多数の人族は
好戦的ではあっても平和を好む。
 ただ平和を愛し安定した暮らしを願い、それを実現する為に努力している人の方が
遥かに数としては多いのだろうが、それでも、戦いという強烈なものから受ける印象
の方が強くなるのはどうしようもないことだった。
 なんにせよ、この三界の中で最も数の多い人族は、結局の所、数が多いだけ多種多
様の者が存在する、ということなのだろう。
 確固たる存在意義を持って在る神や、神族とは比べるべくもない。
 サスケのような神族にとって、他者と争うことには最初からまったく意味がなかっ
た。
 全ての存在が最初から完璧なる意義を持ち、存在することそれ自体に既に重要な意
味があり、それに従って生きている者たちにとって、相争うものなどない。
「そーいえば」
 ふと、そんなことを思っていたナルトの頭に、ある人物の姿が思い浮かんだ。
 実に腹立たしい感情を伴って。



                              ………To be continue