滔天  
  

 整った顔立ちの人間が、静かに怒ると異様な迫力があるものだ。
 それをナルトは目の前にある顔を眺めつつ改めて実感としてそう思う。
 眺めているというのは若干、言い方が間違っているだろうか。態勢からする
とただならない気配にすっかり気圧された状態で相手の顔を見つめるしかない
状況、すなわち、蛇に睨まれた蛙さながらの状態である、と言うべきかもしれ
ない。
 睨む側がうちはサスケで、身を竦ませた側がうずまきナルトだというもの、
妙にはまっていてむしろ笑えない。
 と思っていたわけでもないだろうが、少し離れた場所でその様子をじっと見
ていた潦と炯熾はまったく動く様子のない二人を見飽きたのかふああっと大き
な欠伸を順に吐いた後で潦は自分の前足に炯熾はその潦の腹の辺りへと頭を乗
せて静かに寝息を立て始める。
「火影様」
「はいはいはーい、御免ってばよ!」
「返事は一度で結構。それに私はまだ何も申し上げておりませんが、今の謝罪
はどういった意味のものなのか、お教えいただけますか」
「えーっと、なんとなーく察しちゃったというか、えー」
「ほう? 何を察せられたのでしょう?」
「あー、えー、サスケがすげーとってもこれ以上ないってくらい不機嫌な理由、
とか?」
「なるほど、火影様には私は不機嫌だと見えるわけですね?」
 見えるもなにも、それだけ凶悪なオーラをこれ見よがしに撒き散らしておい
てどの口がそうれを言うか、とナルトは思い切り心の中で毒づいた。あくまで
も心の中で。
 うっかり誤って口しようものなら、どんな返しがくるか分かったものではな
い。サスケのお小言には慣れているナルトではあるが、だからといって好き好
んでその重箱の隅を突いたような微に入り細に渡るお説教を聞きたいものか。
 そんな物好きがいたら是非お目に掛かりたいものである。
(………あ、いた。一人)
 空気の読めないランキング暫定一位、空気読めない選手権があったらぶっち
ぎりで首位を掻っ攫いそうな男が一人、ものすごく身近にいるじゃないか。ナ
ルトは脳裏を過ぎった悪気の欠片もないからこそ余計に始末の悪過ぎる仲間の
存在を思い出した。
 自分も大概その場の空気を読めないところがあると言われるが、あの男には
負ける。というか、勝ちたいとも思わないが。
(でもさ、サスケはもっと性質悪いんだよな。空気をわざと読まなかったりす
るとこがあるから………って、これ、シカマルもそうだっけ。頭のいい奴って、
なんか面倒だよな)





 
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