月見て跳ねる エピローグ
「あ、お月さん見えるってばよ」 「ああ、そうだな」  寝転んだ二人の目に、空の高みから降りてゆく満月が映る。 「綺麗だってばよ」  森の中で笑い転げたあとで、サスケは泥だらけのナルトを連れて自宅に戻った。  単純にナルトの家よりも近かったから、理由はそれだけだ。  それだけだったのだが、泥で汚れたナルトを風呂に押し込み、続いて自分も入っ て、もう遅いし泊まっていけと言った時には流石に少しだけ言葉を躊躇った。  けれどその申し出に、予想外にもナルトが嬉しそうに笑って頷いた時、どれだけ サスケが内心でほっとしていたかを、ナルトは知らないだろう。  そして二人は、一つの布団に一緒に横になっている。  独り暮しの生活で二つも布団があるわけもなく、まあまだ冬でもないのだし、任 務で寝起きを共にしたこともあるだからとこれといって二人は特に喧嘩もしなかっ た。 「サスケ」 「なんだ? もう寝ろよ、明日は任務だぜ」 「うん、でもさあのさ」  ナルトは少し言い淀んで、それからむくっと身体を起すとじいっとサスケを見た。 「ごめん」 「なにが」 「なにがって………だから、今日のお月見。おまえと約束してたのに、俺」 「月、見れたんだろ」 「え? うん」  ゆっくりと、サスケも身体を起す。 「イルカ………先生やサクラと一緒に月見れて、楽しかったんだろ」 「………うん」 「なら、いーじゃねーか。そこに行かなかったのは俺の勝手だ」 「そーじゃないってばよ、俺、おまえと先に約束してたのに、それ勝手に………そ れもあるけど、それより、おまえお月見団子まで用意してくれてたのに………だか ら………」 「ナルト、おまえ言ってること、支離滅裂だぞ」 「うー、だからあ」  サスケの呆れたような顔に、自分でもそうだと言う自覚があるのでナルトは困っ たように顔を顰めてしまった。  上手く、言葉にならないもどかしさに段々苛立ちが募って、それがそのまま顔に 出る。  呆れるほど単純。  サスケはやれやれと溜息をついてしまった。  部屋に勝手に入り込んだらしいナルトが、あの月見団子を見たのは失敗だったと 思う。  多分、このお人よしはそれだけで色々考えてしまったのに違いない。 「気にしてねえよ」  ぽん、とサスケはその手をナルトの頭に乗せる。  それは普段だったら絶対にできないことだったが、なんだか平気で出来てしまっ た。 「でもさ」  気にするなと言っても、無駄なんだろうなあ、とサスケは思う。  普段もちょっとフォローしてやるだけで、余計なことするな、と言う割にそれを 借りと考えてなんとか返そうと四苦八苦しているくらいなのだから。 (結局それが空回りしてるあたりが、こいつらしいんだけどな)  どうしたものか、と考えて。 「だったら、来年の月見団子はてめーが用意しろよ」 「へ?」 「あれ、けっこう高かったんだぜ。それぐらいしてもいいんじゃねえの?」  相変わらず自分の頭の上にサスケの手があることも忘れて、ナルトは目線を上げ た。  夜の闇の中ではサスケの目にどんな表情があるかまで見て取ることができない。  でも、笑っているように、見えた。  口調こそどこか皮肉っていたが、その表情はとても優しかったと。 「おう! 任せとけってばよ! 来年は俺がすっげえ美味い団子用意してやるって ばよ!」 「言っとくけど、てめえの手作りってのはなしだぜ」 「なんで」 「結果が見えてる」 「ひでえー!」  枕を掴んで、ナルトはサスケに襲いかかった。 「やめろ、この馬鹿!」 「五月蝿いってばよー!」  言葉のわりにどこは嬉しそうなじゃれあいをみせる二人を、のんびりと西の空へ 沈み行く月はどこか楽しそうに見ていた。  翌朝、いつのまにか手を繋いで寝ていた二人は、同時に目覚めるとお互いに相手 の所業だとして朝っぱらから元気に口論を始めることになるのだが、本当はどちら のしたことだったのかを知る術は勿論、ない。                                   02.09.27  

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【BGM】『僕らの求めた夢』Copyright(C)煉獄庭園 


まだまだお子様ですねー(笑) ってゆーか、うちのサスケはこの頃から全然成長していかない気がします。 ええ、エッチ方面に関して。 成長しないのはむしろナルト? それともサスケが奥手なだけ? いや、私のせいだろ、私の………